林田院長のマニアックブログ『糖化とアンチエイジング』

 

寒さが厳しい季節が続いていますが、皆様どのようにお過ごしでしょうか。

空気の乾燥や寒さに伴い、インフルエンザや風邪も流行っております。

加湿器などを用いて乾燥対策、体調管理に注意して頂き、皆様が元気にご活躍頂ければと思います。

さて、今回は食事についてアンチエイジングの研究の観点も交えて考察してみることに致しました。

日本人の1日当たりの人のエネルギー摂取の必要量は、成人男性で2,600-2,800kcal、成人女性で約1,850-2,050kcalと言われています。

厚生労働省は、日本人の食事摂取基準の中で糖質や炭水化物から摂取するカロリーを、一日の総摂取カロリーの50-65%を推奨しております。

そして現在、日本人はエネルギー摂取量の60%を糖質から摂取しています。

この糖質摂取量を40%に制限することは、血糖値を下げ、インスリン分泌低下、脂肪細胞の燃焼を促し、体重を減少します。

さらにこの糖質制限により、15ヶ月間で男性は2.0-7.0、女性は1.5-9.0kgの体重減少を認めたと、研究報告があります

この糖質制限において1日あたりの糖質量は150-200gで、これは1食につき、白米だと茶碗半分、麺類だと半分、スイーツやケーキだと半分、食パンだと約1枚に相当します(但し、野菜やおかずなどの副食は制限しなくて良いです)。

次に、カロリー制限とアンチエイジングの関係性について検討していきます。

まず、上記のサルの写真を見てください。(2枚目の写真)

これはアメリカのウィスコンシン州で行われた研究の写真で、平均寿命である27.6歳のアカゲザル2頭の写真です。

同じ年齢でも、AB写真のサルよりCDのサルの方が若いように見えます。

この研究は、カロリー制限と病気の発症や死亡の関連を調べたものです。

CDの写真のサルは、カロリーを70%に制限しました。

腹八分目とはよく言いますが、カロリー制限で寿命が延びることが知られており、さらにこの研究では、カロリー制限で癌や糖尿病などの代謝性疾患の発生率が下がることも報告されています。

アンチエイジングについて、糖化の影響も今日トピックスになっています。

ここでまずはAGEsについてご説明致します。

AGEsとは、Advanced Glycation End productsの略で、タンパク質が糖と結合した結果の糖化最終生成物のことです。

このAGEsの生成・蓄積は、糖尿病や動脈硬化、骨粗鬆症、不妊、アルツハイマー病などをもたらしますが、皮膚においては角質に蓄積することで肌のキメ喪失などにも関連すると言われており、美容にも大きく影響します。

また緑茶に含まれるカテキンなどのポリフェノールは抗酸化作用があり、このAGEsを抑制するという説があります。しかしポリフェノールが高濃度になると、逆に酸化反応を促進することもあり、摂取し過ぎることはかえって逆効果かもしれません。

カロリー制限も糖化も、「私は痩せているから関係ない」と思う方もいるかもしれません。

しかし、低体重は糖尿病の発症リスクを増加するという報告があり、特に食べない、運動しないというエネルギー低回転型の若年女性はリスクが高いようです。

もちろん高体重でも糖尿病は発症の可能性が上がりますが、BMIの正常範囲である18.5-22.9と比較して、BMI 23.0-24.9(このBMIは正常範囲ですが)で糖尿病発症リスクが男性で1.26倍、女性で1.10倍、BMI 25.0以上で男性1.55倍、女性1.74倍となります。

しかし、BMI18.5未満では、男性1.87倍、女性1.93倍と、BMI 25.0以上の方と比較しても、糖尿病の発症リスクはより高いことがわかります。

糖尿病とは、インスリンが働かないことで血糖値が上がり、血管のダメージが生じて心臓、腎臓、眼などに異常が生じる疾患です。

インスリンが作られていても、インスリンへの反応性が低下している、いわゆるインスリン抵抗性が高いことも関係します。

次に上記のグラフを見てください(3枚目の写真)

この図では、強い影響ではありませんが、筋力強さとインスリン抵抗性が相関することが示されております。研究では、大腿四頭筋の筋力とインスリン抵抗性が脳梗塞のリスクを予見できるかもしれないと報告されています。

骨格筋での量は筋量、質はインスリン抵抗性と考えることができます。

筋量を増やすには、筋肥大や持久力向上に関連するレジスタンス運動(筋肉に負荷をかけて繰り返し行う運動であるため筋トレをイメージして頂ければと思います)やタンパク質摂取が有効です。

一方で、インスリン感受性には有酸素運動が有効です。

つまり、有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、インスリン抵抗性が改善されます。

そして、血糖値の上昇で糖化が進行します。

そのため結論として、糖分の摂取に気を付けること、運動習慣を持つことがアンチエイジングにおいて重要と考えられます。

厚生労働省は、健康日本21の中で、週2回以上で130分以上、少し息が弾む程度の負荷で運動することを推奨しております。

運動が身体面にもたらす影響は様々ですが、筋肉活動は神経成長ホルモンの合成を促し神経系にも良い影響を与え、不安の改善にも役立ちます。

さらに、運動やストレッチが入眠や中途覚醒に対しても有効であるという報告もあります。

日本皮膚科学会では、睡眠がニキビなどの肌トラブルに関連すると指摘しており、睡眠は美容と関連します。

できるだけ食事量や炭水化物の割合に注意し運動を行うことが、アンチエイジングに重要です。

この点に注意しながら、今年も元気に若々しくご活躍して頂ければと思います。

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