林田院長のマニアックブログ『ビタミンC』

院長の林田です。秋の日差しもかなり弱まって参りました。

今回は、ビタミンCが肌にもたらす影響について考察した論文をご紹介致します。

(マニアックです。)

夏のUVダメージが秋より現れるため、この時期にしっかりと肌のケアをする必要があります。

Nutrientsに掲載されたPullarらの論文でスキンヘルスにおけるビタミンCの役割を調査した論文です。

Pullar JM, Carr AC, Vissers MCM. The Roles of Vitamin C in Skin Health. Nutrients. 2017 Aug 12;9(8):866. doi: 10.3390/nu9080866. PMID: 28805671; PMCID: PMC5579659.

皮膚の主な機能は、環境刺激のバリア機能であり、表皮と真皮の2層から構成されています。

表皮は高度に細胞化されバリア機能を有し、真皮は強度と弾力性の確保に加え、表皮に必要な栄養を供給します。

表皮には高濃度のビタミンCが含まれています。

老化した皮膚や光老化した皮膚はビタミンCのレベルが低く、真皮よりも表皮に2-5倍多く、特に角質深層に多いとされています。血液からの取り込みは、ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCTs)が関与し、SVCTs1は高濃度ビタミンC、SVCTs2は低濃度のビタミンCの取り込みに関与します。多くの組織にはSVCTs2のみですが、皮膚にはSVCTs1とSVCTs2の両方が存在します。血液中のビタミンC濃度が低下すると、臓器中のビタミンC濃度も低下し、ビタミンCの内服は血中のビタミンC濃度が飽和状態に達していない場合においてのみ、皮膚のビタミンC濃度上昇に有効であると考えられます。

ビタミンC外用はpH4以下のときのみしか表皮を浸透できないこと、アスコルビン酸誘導体は酸化に対して不安定であることから、開発が難しいとされています。

また、ビタミンCは、コラーゲンの生成を促進し、UVによる光ダメージに対しての抗酸化作用を補助します。

本研究では、スキンヘルスにおけるビタミンCの潜在的な役割について検討しました。

経口でのビタミンC摂取と外用を比較し、ビタミンCのスキンヘルスにもたらす潜在的な効果について、ビタミンC摂取の改善が最も有益であると考えられる皮膚特性について考察しました。

ビタミンCは、コラーゲン分子の構造を安定化させるプロリンおよびリジン水酸化酵素の補因子として、コラーゲン遺伝子の発現を促進します。ビタミンCが欠乏すると、コラーゲン生成が低下し、コラーゲンの架橋が減少します。ビタミンCは強力な抗酸化物質ですが、抗酸化物質の一端に過ぎません。ビタミンEとの併用で、特に皮膚の抗酸化効果があることが知られます。

ビタミンCはメラニン合成の減少効果もあります。これは、メラニン合成の律速となるチロシンキナーゼの阻害作用によります。また、ケラチノサイトの分化にも作用して、角層の超微細構造の編成を改善し、バリア機能の強化を行います。さらに、線維芽細胞の増殖についてのエビデンスがあります。

加齢や外的要因により、シワ、シミ、乾燥などがおき、線維芽細胞やマスト細胞の減少、コラーゲン産生の減少、血管新生の減少とともに、真皮層の厚さの減少が見られます。

また喫煙、栄養不良、太陽光への慢性的な露出など、皮膚の早期老化を引き起こす環境的な危険因子への暴露を制限すること、弾性線維系とコラーゲンの再生を助ける局所的または全身的な治療など、皮膚のダメージを回復させる可能性のある治療を行うことで、加齢の変化を緩和できるかもしれません。

栄養と外見に関しての研究のレビューで、栄養介入での皮膚の弾力性、顔のシワ、色調に関連があることが報告されています。栄養介入では、フルーツや野菜などの高摂取が多く含まれていました。

皮膚に対しての重要な外的課題は、太陽光の紫外線や日焼けマシンなどからのUVの慢性的な暴露です。UVは活性酸素を産生し皮膚にダメージを与え、細胞外マトリクス成分を損傷し、細胞の構造と機能に影響を与えます。

皮膚はビタミンCやEなどで酸化物質を抑制し、ダメージを修復しますが、この抗酸化物質の消費で皮膚の防御が圧迫されることがあります。UVへの急性暴露された皮膚は、炎症を生じ、サンバーンを引き起こすことがあります。

さらに、色素沈着の変化、免疫抑制、真皮細胞外マトリクスの損傷が起こります。一方で、UVへの慢性的暴露は、皮膚構造の破壊を伴う皮膚の早期老化を引き起こし、皮膚がんにつながることがあります。

また光老化の特徴として、しわ、色素沈着、弾力性の低下、たるみなどを引き起り、年齢とともに浅黒くなります。真皮の弾性繊維はUVの影響を受けやく、光老化を起こした皮膚では、日光エラストーシスという弾性繊維タンパク質が累積されます。そして慢性的なUV暴露は、表皮の老人性色素斑や肝斑をもたらすことがあります。

UVの暴露を防ぐことが、光老化から皮膚を保護する最善策ですが、常にUVを避けることができるわけではなく、一般的にはサンスクリーンを用います。

そしてビタミンCは、UV暴露によって引き起こされるダメージを軽減します。ビタミンCの外用と内服の両方で抗酸化作用が認められました。ビタミンCは脂質の過酸化を防ぎ、ケラチノサイトをアポトーシスから保護し、細胞の生存率を向上します。

乾燥肌の有病率は年齢とともに増加します。皮膚の水分量や皮脂分泌量が減少することが原因と考えられてきましたが、これは、角質化プロセスおよび角質層の脂質含量の変化による可能性が高いと考えられています。

乾燥肌の原因は、3つの因子の欠乏で、全脂質の40~50%を占める角質層における主要な細胞間脂質であるセラミド、角質細胞の水分のキープに関与する天然保湿因子(NMF)、新しく発見されたアクアポリン水チャネルを介した表皮自身の水分ネットワークの働きです。そのため、乾燥肌の治療には、脂質バリアと角質層の天然保湿因子の維持のために外用を用いることがありますが、真皮の栄養補給も重要です。

ビタミンCはバリア脂質の産生を促し、ケラチノサイトの分化誘導をすることで、角質層形成に役立ち、皮膚の水分損失から守ります。

シワは加齢に伴って形成され、UVや喫煙などの外的要因によってその形成が著しく促進されます。コラーゲンの損失や劣化などでの真皮層の変化によるものと考えられておりますが、メカニズムはほとんどわかっておりません。ビタミンCの改善は、コラーゲン合成を介してしわの形成から保護するという説は、喫煙しているかどうかで創傷治癒やコラーゲン合成で差を認めました。喫煙者は非喫煙者と比較して、ビタミンCが枯渇しておりました。

ビタミンCの皮膚へのすべての影響の中で、創傷治癒の効果は最も劇的なものです。これはコラーゲン合成に対して補酵素直接的に関与するからです。

また、皮膚の炎症のある人はあまり炎症のない人と比較して、ビタミンCのレベルが低い傾向がありました。これは酸化還元活性を持つビタミンCでのターンオーバーの押下が反映されているのかもしれません。

 

また他のビタミンCについての研究も考察して参ります。

Al-Niaimiらの研究でも、PullarらのようにビタミンCの肌へもたらす影響が検討されております。

この研究では、外用を中心に評価していますが、ビタミンCの作用が抗酸化作用、免疫抑制、コラーゲン合成などでのアンチエイジング効果が指摘されています。研究では、ビタミンCの概要は8%以上でないと効果が弱い一方で20%以上ですと皮膚への刺激が強いとされ、10~20%が良いとされております。また、10%のビタミンCを外用した被験者たちは光老化スコアが改善し、しわの改善を認めました。

McArdleらは、UVでの酸化ストレスを受けた皮膚の研究をしており、ビタミンCの内服でUV暴露に対しての反応を評価しています。結果としては、ビタミンCが細胞の還元反応に影響する可能性が示唆されており、抗酸化作用があると考えられております。

 

これらの情報を総合的に検討しますと、そもそもビタミンCは水溶性のビタミンであり、内服においてリスクが低いこと、そのシミやシワ、アンチエイジング効果などを考慮するとbenefitが勝ると考えられます。

 

 

今回は医学的にビタミンCと肌の老化についてご紹介しました。

・加齢や紫外線がもたらす肌への影響

・ビタミンC・Eを補う必要性

・喫煙者と非喫煙者でのビタミンCの保有量の差によるコラーゲン合成能力の差

・ビタミンC外用はどのようなものを選べばいいのか

などなど、盛り沢山な内容となってしまいました。

 

ここまでご覧いただいた皆様、大変ありがとうございました。

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